子どもの習い事で不動の人気を誇る「ピアノ」。小さい頃からピアノを習うことで、技術的なものだけでなく、子どもの将来に役立つ色々な力を伸ばすことができます。
そこで、全5回でお届けする『ピアノが上手くなる、ピアノで子どもを伸ばす方法』。前回は、「子どもの音感を伸ばす方法」について取り上げました。第2回となる今回は、音感と同様、ピアノを習う上でとても大切な要素「リズム感」に注目しました。
そもそも「リズム感」ってなんなのでしょうか?「リズム感」がない人はずっとないままなのでしょうか?また、子どものリズム感を家で伸ばすことはできるのでしょうか?
今回も、そんな疑問を宮地楽器ピアノ講師小野田先生に聞いてみました。
▼今回インタビューした先生
「リズム感」ってどんなもの?
「リズム感」は身体的な感覚
――リズム感とはどのようなことを言うのでしょうか。
「音感」は耳の感覚でしたが、「リズム感」は身体的な感覚です。音楽の三要素である「リズム」「メロディー」「ハーモニー」のうちの1つになります。
「リズム」というのは、音楽としての音以外にも身近にあって、例えば話し声、鳥のさえずり、足音、波の音、雨音など。いわゆる「繰り返されている調子」を「リズム」と言います。
ですから、「リズム感」は音楽を身体で感じて、長さや拍子にのれるか、という感覚ですね。また、反対に決まった形ではなく、自由な自分のリズムを持っているというのも、リズム感になります。
「生活のリズム」と言ったりしますよね。その場合の「リズム」は、強弱、明暗、テンポといった意味で使いますよね。
音感と同じで、リズムも鍵盤の前だけではなく、日常の中で感じられることなのです。特に小さなお子さんは、遊びの中で身につけていきますので、心から楽しく学んでいけることがとても大切だと感じます。身近なものからリズムを感じていくことによって、音楽も身近になりますしね。
「リズム感」はトレーニングで鍛えられる
――「リズム感がない」とよく言いますが、どういう状態なのでしょうか。
単純に「リズムにのれていない」ということになると思います。音楽においては、音楽にのれないということは、音楽に入っていけないということになりますね。みんなでアンサンブルをしていても、自分だけ入れなかったり、一人だけずれてしまったりと。
例えば、リズム感が無いとダンスがうまく踊れないですよね。それと同じで、ピアノを弾くときにリズム感がないと、テンポも定まらないし、メロディーもきれいに歌えなくて、正しく弾けないということになってしまいます。
ただ、リズム感はトレーニングによって鍛えることができますので、ピアノを習っていく段階で、きちんとリズム感も鍛えられると思います。
「リズム感」が良いとこんなメリットが
――リズム感が良いと、何かメリットはありますか?
演奏をする際に、正しい一定のリズムで弾けるようになる、体全体でリズムや拍子を感じて演奏できるようになるというのはとても大切なことです。
また、ピアノは、右手はメロディー、左手は伴奏と、両手で別のリズムを弾きますので、一定のリズムを感じながら、違うリズムも感じられるようにならないといけません。
リズム感が良ければ、そういった一定のリズムを感じながら、違うリズムも感じるという習得が早く、大きなメリットだと思います。
逆に、リズム感があってのデメリットや困ることというのは、特にないと思います。ピアノを弾く、音楽をする上で音感同様、リズム感もとても大切なものです。
音楽家には「リズム感」は必須
――リズム感が必要な仕事はありますか?
音感と同じで、やはり音楽家ですね。楽器だったり、音楽に従事している以上、リズム感は必須となってくると思います。
ピアノのような、一人で演奏する独奏楽器と呼ばれる楽器でも、アンサンブルだったり、伴奏をするなど、他の人と合わせることがあります。さらにオーケストラやバンドなど、他の楽器と合わせる演奏では、リズム感は必須になります。
特に、打楽器や民族楽器の演奏者は、本当に独特なリズム感を持っています。とてもリズム感が長けているなと感じますね。
また、スポーツでもリズム感は大切です。ダンスではもちろん必要ですし、他のどんなスポーツを見ていても、それぞれ一定のリズムがありますよね。リズムは身体の感覚ですから、スポーツ選手などは、リズム感にも長けているのではないかなと思います。
・・・
次に、家でできる、「リズム感」を鍛えるトレーニング方法について、幼児と小学生に分けて聞きました。
2、3歳からできる、リズム感を鍛える方法4つ
(1) 音楽に合わせて手をたたく、体を動かす
リトミックという言葉を聞いたことがあるかと思いますが、音楽に合わせて手を叩いたり、タンバリンなどの簡単な楽器をたたいたり、身体をうごかしたりします。
音楽はCDでもピアノ演奏でも良いですが、ピアノであれば、テンポをかえたり、音の大きさをかえたり、華やかにしたり、ちょっとさみしくしたりと、子どもの様子を見ながらアレンジできるのでおすすめです。好きな曲や、よく知っている曲から始めると良いですね。
(2) オーケストラを聴きながら、各パートに合わせて色々な動きをする
オーケストラのCDを聴いたり、映像を見ながら、大きな太鼓の時は叩くまね、トランペットの時はこの動き、など決めて、各パートの音に合わせて動いて楽しみます。
また違う音が出てきた!と結構忙しく、小さなお子さんなら楽しんでできると思います。
特にリズム感を鍛えるという意味では、打楽器などがたくさん出てくる曲が良いですね。
(3) リズム譜を使って練習する
音の高さがない、リズムだけの譜面「リズム譜」を使って練習します。いわゆる、「タンタンタンタタ」といったリズムだけのものです。
リズム譜を使って、一定のテンポ、早さで手拍子をすることから始めて、次に手拍子をしながら、拍を「1.2.3.4」とカウントしてみます。また、反対に手拍子でリズムを叩いて、足で今度は拍をとってみるなど。体全体を使ってリズムの練習をします。
ピアノの前に座ってやるのではなく、立って体全体を動かす練習です。慣れてきたら、少しずつ、曲の長さやテンポもかえていきます。
(4) アンサンブルを楽しむ
レッスンでは先生がリズムを弾いて、生徒はリズムを聴き取って手をたたく、リズム譜に書くということもします。先生役と生徒役を反対にして、生徒がリズムを弾いて先生が聴き取る、というのも良いですね。
また、音感と同じように、アンサンブルや、簡単な連弾をするのも有効です。自分で一定のテンポをとりながら、相手のリズムもきちっと感じて合わせていくことで、聴く耳や、リズム感、集中力が養われます。
小学生におすすめリズム感を鍛える方法4つ
(1) リズム譜を使った練習
リズム譜にそって、1.2.3.4とカウントしながら、リズムをとっていきます。
これは鍵盤の好きな音でずっと弾くのも良いですし、机の上で鉛筆でトントン叩いてという形でも良いです。必ずカウントをしながらすることが大切です。
(2) メトロノームに合わせて、一定のリズムを速度を変えてたたく
カチカチと音のテンポを取ってくれる「メトロノーム」という用具があるのですが、それに合わせてリズムの練習をするのも、リズム感を鍛えるのにとても有効です。
少しずつテンポを早くしたり、反対にものすごくゆっくりにしたりと、テンポを変えてもとにかく継続的に拍子をとり、リズムを叩いていきます。
拍子を必ずとることによって、拍子感覚も身についていきますし、同時にとてもゆっくりにすると集中力も養えます。
(3) ピアノの練習曲で、難しいフレーズを取り出して五線譜に書いてみる
今、ピアノの練習で弾いている曲の中で、自分にとって苦手な部分や、特に難しい、複雑なフレーズ、リズムが出てくるところを、五線譜に書き写してみます。
楽譜を書き写すことによって、リズムのしくみをより深く知ることができるのです。もちろん、リズム譜にしてリズムだけに注目して練習したりという方法も有効です。
そんな形でフレーズを取り上げてから、ピアノをもう一度弾いてみると、うまく弾けるようになっていたりします。
(4) アンサンブルや連弾を楽しむ
相手の音やリズムを聴いて合わせなければならない、アンサンブルや連弾は、小学生でも有効です。幼児の時よりもより複雑な、アンサンブルや連弾ができると思います。
先生はどうやってリズム感を鍛えたの?リズム感を鍛えるレッスンは?
打楽器など、色々な楽器の演奏経験がリズム感も育てる
――先生はどのようにしてリズム感を鍛えましたか?
小学生の頃、クラブ活動で打楽器を演奏していた経験が、リズム感やピアノにとても良い影響を与えてくれたと思います。
ピアノは基本的に独奏楽器ですが、独りで色々なパートを担っていかなくてはならない楽器です。ですから色々な楽器を少し体験してみるだけでも、音楽の世界は広がります。オーケストラを聴くというのも、同様に音楽の世界を広げてくれます。
他にはやはり、音楽の総合基礎学習のソルフェージュを幼少期から学んだことが、リズム感にも役立っていると思います。
リズムを書き取る「リズム譜」で練習
――生徒のリズム感を鍛えるために、どのようなレッスンをしていますか?
音感のところで出てきました聴いた音やメロディーを書き取る「聴音」のリズムバージョン、「リズム譜」での聴音を行っています。
また、リズム譜の教材を元にしたレッスンの他に、今そのお子さんがレッスンでやっている曲のフレーズをとりあげて同じようにリズム譜にするということもします。
音感の練習と同様、リズム感の練習もすべて影響しあって、よりよい演奏表現のためのレッスンとなっているのです。
また、ソルフェージュでも音にとらわれず、リズムのみをとるというレッスンもあります。ソルフェージュの練習は、毎回レッスンの中でどのぐらいと決まっているわけではなく、その時のタイミングや、子どもに合わせて、普段のレッスンに取り入れています。
あとは、そのお子さんの能力や好みにあった課題や教材であることが大切です。小さなお子さんでしたら季節の曲、秋なら童謡の「どんぐりころころ」や、「こぎつね」など。子どもが知っている曲を取り上げて、音楽ってこうなっているんだなあと感じてもらうのです。楽譜にするとこうだな、リズムはこうだな、音符にするとこうだなというのを、身近な曲で感じてもらっています。
音感のレッスン、練習も同様ですが小学生くらいになったら課題を明確に伝えたり、目的や効果もお話して、お子さん自身の練習で意識出来るようにしています。
※こちらで紹介した練習法はほんの一例となります。
●第1回 お家でできる!子どもの音感を伸ばす方法 ~ピアノで音感を鍛えよう~
●第2回 お家でできる!子どものリズム感を伸ばす方法~ピアノでリズム感を鍛えよう~(本記事)
●第3回 お家でできる!「譜読み」の練習法~楽譜を読めるようになろう!~
●第4回 お家でできる!上達する「ピアノの練習法」~ピアノが上手くなるには?~
●第5回 お家でできる!「発表会の練習法」~緊張しない方法は?~
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